PC720  6860 


 
概略
  タイプバリエーション
  システムボード
  サービスパティション
  CPU
  ジャンパーブロック
  SIMM
  ハードディスクインターフェース
  CD ROM
  L2 キャッシュ.
  スモール PCI
  BUS ライザーカード
  ビデオ
  PCMCIA
  電源ユニット

概略
新IBM PC シリーズ PC720 6860 は MCA PS/55シリーズの後継機として Pentium 90搭載の PC750 6885 と同時に 1995年 1月に発表されました。  ハイエンド互換機でも既にPentium-90機が出ていましたが、中級機ではまだDX4-100がメインといったマーケット状況で、当時のDOS/Vマガジンを見てみると、IBMの広告では PS/V Vision 486SLC2-66 が表紙の見開きを飾っていたり、T-ZONEの広告では 30-U 80MB モデルが \79,800で大安売りで出ていたりします。
こういうなかで PC750 6885 のISAモデルとともに発表されたわけですが、6885がPENTIUM90を搭載していたのに対し、6860 は CPU は DX2-66/DX4-100 を採用した486系のシステムで、従来のJDOS環境の継続を重視したモデルも用意されていました。 PC720 6860 は MCA + PCI + ISA風のPCMCIAスロットを持つという一風変わったPC で、拡張性に乏しいように見えますが、当時のDOS/WIN3.1環境では不足するスロットを2口のPCMCIA と スモールPCI のネットワークカード (  TokenRing と Ethernet の2種類があった )でカバーすればそこそこ拡張も可能で、PS/55 でネックだったビデオ周りも S3 VISON 864 2MB で結構快適な環境を提供しました。

PC750 はワールドワイドモデルで、米国では PC730 6876 というPentiumベースの PC750 のロープロファイル版もありましたが、日本では後に MCA版の PC750 6886 は発売されましたが、PC730の方は発売されることはありませんでした。 PC750 6885 と 6886 はISA機/MCA機という違いはありますが使用しているシステムボードは共通で、PC720 の場合も同様に ISA版 6869 と共通のシステムボードを採用しています。
尚、同じ PC720 でも後に発売された モデル 6863 は P-100 を搭載するISA機で、こちらは PC750 6883 (日本独自モデル ) と共通のシステムボードを採用しており、このセクションで取り上げる PC720 6860 とはかなり異なります。

上の画像は正しくは ISA モデルの PC720 6869-J4K ですが、正面のPCMCIA スロットは 6860にも移植可能で外形そのものは同一ですので3/4番目のPCMCIAを備えた J4K モデルを掲載いたしました。( 1/2番目の PCMCIA は他のモデル同様 本体後部にあります。

本モデルについてはARDENT TOOLの管理者Slavotinek氏がマニュアルと一部の同梱フロッピー付きで入手され、より詳しいページを公開していますのでそちらもご確認ください。 そこを見ればこちらは要らなかったりして...(^^;



タイプ バリエーション
PC720  モデル6860
J4G
J00
J04
J08
JZG
 CPU
iDX4-100
i486DX2-66
 L2 キャッシュ
128KB
無し ( ソケットそのものが省かれている )
 RAM( 標準/最大)
 8MB (  最大128MB,  32MB x4 )
4MB(最大128)
 VRAM
 2MB
1MB ( 2MBに拡張可能 )
 FDD
3モードドライブ ( 1.44MB/1.2MB/720KB ) x1
 HDD
728MB
540MB
 ビデオ
S3 Vison864
 D/A /NI-J
 オプションスロット
PCI or MCA  x1,  MCA x1
MCA x2
 スモールPCI (NIC)
----
----
TokenRing
Ethernet
---
 PC カードスロット
Type I/II x 2 もしくは Type III x1 ( ISA 形式 PCMCIA /Aで提供)
 寸法 ( mm )
 360(W) x 370(D) x 89(H),  9Kg
 導入済み OS
PC DOS J6.3/V, Windows J3.1
DOS J5.02Z

JZGモデルはビデオに PS/55 Display Adapter /NI-J(専用) を使用 し DOS J5.02Z ( JDOS ) 同梱したモデル。. 

6869  は PC720の PCI/ISAバージョン。. 
同じく PCI/ISA の 6863 はPC720というモデル名であるが Pentium-100 を搭載するまったくの 「別物」。



6860/6869 システムボード ( DX4-100 モデル ) 

J23 のL2キャッシュソケットの有無を除き DX2-66もほぼ同一   (前期 DX2-66)| (後期DX2-66)  

J1:   FDD コネクタ 
J2:   IR/PCMCIA
J5 :  Main Power SW へ
J11: PSU へ
J12: PSU へ
J14: CPU ソケット( SX/DX ) 
J19: Unknown ( default 1-2  closed ) 
J20: PSUへ ( power good ? ) 
J22: FAN ( ハンダランドのみ ) 
J23: L2 キャッシュソケット ( DX4モデルのみ )
J24: BUS ライザーコネクタ
J26: PCI-1 ( スモール PCI コネクタ )
J27: PCI-2 ( ハンダランドのみ )
J32: スピーカーへ
J34: スピーカーボリューム 
J36: サスペンド/レジューム
J37: LED ( HDD & PWR ) 
J44: VESA VIDEO 
U7  : Socket 3 
U16: S9424BP/PC87323VULB
U18: M33s0570-013 OKI/06H3669 IBM 
U24: 85G7319 
U40: Unknown 
U42: Unknown 
U41: S3 Vision864/86C864P4 
U53: S3 SDAC/86C716MG 
U55/U56: Sockets for Additional VRAM 
U57: DRAM  KM416C22568J-6
U60: Ditto
J50: Frequency select ( 66/50 ) 
J51: Mouse EN/Disable 
J52: FDD write EN/Disable 
J53: 1-2/Normal, 2-3/RTC Clear 
J54: PassWoard Overwrite 
J55: CPU 電圧設定 ( 5V/3.3V ) 


J2  "IR/PCMCIA"というシルク印刷有り. PCMCIA がフロントベイ用のセカンドPCMCIA を指すのは明白ですが、私は 6869-J4K を見るまで 「計画はあったが発売されることの無かったオプション」 かと思っていました。
さてそうなると"IR" というのは何を指すのでしょう ?   IrDA (赤外線 )装置かな~....
J23 DX2-66モデルは96年7月版のシステムガイドでは搭載無しと記され、実際に私が所有したモデルではランドのみでしたが、後期モデルではシステムボードを共用したようです。 J04を入手されたSlavotinek氏からソケット実装の旨レポートがありました。


コンビニエンス パティション
6860は IML機ではありませんが 「コンビニエンス パティション」を持つことはできます。 当方所有の 6860はフロッピーでリファレンスを起動すると ハードディスクに設定した サービスパティションから リファレンスを起動する場合に比べて異様に時間がかかります。 Compaq の比較的古い機種でも SETUP 起動にフリーズしたかと思うくらい時間がかかる機種がありますが、それと同様に コンフィギュレーションファイルの読み込みのあたりでシステムが停止したかのごとく時間を要します。  全ての機体が同じかどうかはわかりません。 

CPU 
DX2-66、DX4-100 そして PODP5V83 まで使用可能で、3.3V系のCPUを使用する場合はインターポーザーを必要とせずシステムボード上のジャンパー J55 でCPUへの供給電圧を設定します。
尚、PODP5V83を使用するには BIOSを KOJT66JP にFLASH UPする必要があります。 

  PODPへのアップグレード
  PODPサポートシスケット は以下のプログラムで構成されています。
  #1. 6860ref.LZH   ;     リファレンス ディスケット Ver. 1.10 
  #2. 6860diag.LZH ;     診断ディスケット              Ver 1.11 
  #3. PC720SP.LZH ;    システムROM アップデートユーティリティー Ver. 1.10A KOJT66JP 

注 
Win95 サポートプログラム win95serv0.exe, は ISA機 6863/6869 用であり、6860 は対象外です
これに含まれる 32bit PCMCIA ドライバは残念ながらMCAの 6860 では使用できません。  
この点を除けばWin95の使用は何ら問題はありません。

* MCA BUSの PCMCIAは本機に限らず Wndows ではサポートされていません。 
 IBMからもドライバーの提供はありませんでした。
 

ジャンパーブロック
    J55 ; Voltage select 
     5V系 CPU     ;   電源寄りの3連ブロックをショートします。
     3.3V系 CPU :    CPUソケット寄りの3連ブロックをショートします。

    J14 ; CPU select
    486DX  ;   2-3をショート  ( default ) 
    486SX  ;   1-2をショート 

    その他のジャンパーブロック
    J19 : purpose unknown. default  is 1-2 closed. 
    J50:  Output frequency select for programmable IC   
            1-2 /50,  2-3/60 ということだけど....? 
    J51-J54; システムボード線画横の説明参照。  デフォルトの設定は全て 1-2をショート 

SIMM
70ns の ファーストページ パリティ SIMMで  4, 8, 16, 32MB をサポートします。 

ハードディスクインターフェース
IDE チャンネルが一口のみあります。 セカンドチャンネル用のハンダランドはありますが、そこにコネクタを取り付ければ使用可能か否かやったことはないのでわかりません。 可能であったとしても3つ目のドライブを取り付けるスペースは本体内にはありません。
EIDEに対応しており 524MB以上のハードディスクを搭載することは可能です。
今現在 2.4G を使用していますが、以前にSEAGATE の16HEAD 8G ドライブを試したときは認識させることができませんでした。 15HEAD の6.4Gは認識・動作ともに問題はありませんでした。

ハードディスクが Win95下で  MS-DOS compatibility mode になる。
MCA IDE機の場合 Win95 は自動的に "スタンダード IDE/ESDI ハードディスクコント ローラー"の「設定 1」 を適用 しますが、これは IRQが 15番 に固定されています。
IRQ14が規定された 「設定 0」 を手動で選んでやると動作は正常になります。

CD ROM
純正オプションで薄型の 2倍速 CD ROM ドライブ ( ID # 85G7285 )が用意されています。 ページトップの画像を参照ください。
私は長い間 2.5"==>3.5"変換コネクタ経由で東芝ノートPC用の4倍速ドライブを専用ベイに入れていました。 あまりカッコよくありませんでしたが実用上は十分でした。
 

L2 キャッシュ
ソケットは PS/2 の  9577i や 9585 と同一形状のものが使用されています。 
L2 キャッシュモジュールは P/N 85G4865 の 「128KB L2 SUPER CACHE」というもので、これは M70/80 用のREPLY社製 PowerBoard で使用可能です。 実のところ最初のPC720 6860をジャンクで入手したときは内臓されている L2キャッシュを PowerBoardで使用したくて本体丸ごと購入しました。
DX2-66モデルはL2キャッシュは搭載しておらず、ソケットも省略されています(後期モデルではソケットが実装された模様)。

                 L2 Super Cache    

SMALL PCI
  このタイプのコネクタは 他のAT互換機でも見たことがありません。
  日本IBM はこのコネクタ用に以下の2種類のアダプタを用意しました。 

   1)  SFF PCI Ethernet card    ;    C/R 85G4854   6860-J08 に標準搭載 
   2)  SFF PCI TokenRing card  ;   C/R   ?  6860-J04 に標準搭載。  まだ見たことが ありません。

スモール PCI 用コネクタ (中央の黒いコネクタ) 

画像をクリックすれば拡大画像が得られます。

BUS ライザーカード
JZG以外のモデルは同一のライザを使用します。 ライザ上には PCI /MCA シェアスロット x1,  MCA x1 そして 2スロット PCMCIA/A ( P/N  54G0547 ) 用のISA形式専用スロットがあります。
JZG 用のライザは PCIスロットが省かれており、反対側の位置に PC720専用の PS/55 Display Adapter /J2 用のMCAスロットを持っています。  ライザ上の J1 は PS/55 Display Adapterの on/offを設定するものではないかと思いますが定かではありません。 下記参照
 
下の線画は JZGを除く機種で使用されているライザです。 
 

 

J1:  デフォルトは 1-2 クローズ 下記参照
J2:  BatteryConnector (CR2032) 
J3:  MCA1
J5:  PCI 
J4:  MCA2 
J6:  PCMCIA /A
専用 ISA SLOT
J9:  PSU
U1  :   74F760D 
U2/U3: F543 
U4  :   F245
U6  :   06H5423
青い半透明のCHIP) 
U8  :  10G7808 
U15:   M91S028AT OKI/06H6468 
U16  06H4542 
U17:   LH5168N-10L 
J1はPCI/ISAモデルを含めて全モデル共通でシステムプログラムへの管理者パスワードの書き込み禁止・書き込み可を設定するももです。 このパスワードを設定するとリファレンスで構成画面に入る際にパスワードが求められます。 忘れてしまうと電池を抜こうがジャンパー位置を変えようがクリアはできないのでシステム構成変更が一切できなくなり、システムボードの取り替えとなります。 デフォルトは書き込み不可の1-2クローズとなっています。 むやみに触らない方が無難

日本語ディスプレイアダプター/NI-J2を標準搭載するJZGモデルのライーザーは PCIスロット J5 が省かれ、反対側のJ6の下にMCAバススロットが設置されます。
また J1ジャンパーの隣に J2 が追加され標準状態1-2クロ-ズでS3 Vision864がDisableとなっています。 

J1,J2に関する説明はオプションマニュアルのこのページを参照してください


 

ビデオ S3 Vision 864
S3 Vision 864 VRAM 1MB をシステムボード上に搭載し、VRAMは2MBに拡張可能です。
Win95の場合は標準ドライバで使用可能です。 

JZG モデルも同様に S3 Visionをシステムボード上に持ちますが、同時にPS/55 DBCS Display Adapter/NI-J2 が搭載されています。 S3 Vision は無効にされており、通常は初期導入済みの DOS J5.02/Z (  DOS J5.02 のPC720用バージョン ) によりJDOS環境を可能にしています。 

PCMCIA 
2スロット PCMCIA /A は ISAコネクタを持つ当機専用のアダプタで、P-100 の6863を含むISAモデルでもまったく同じ物が使用されています。 このアダプタは本体への取り付け方法が特殊でPC720専用となっており、他機の ISAスロットで使用するには、 1) スロットを拡大する  2) 本体への固定方法を考案する、などの細工が必要です (試した事はありませんけど PC720 6863 も同じアダプタを使用するので大丈夫だと勝手に思っている。)

ISA機では Win95B (あるいはWin98 ) の標準ドライバで何ら問題なく PCMCIAを認識しますが、MCA機では正常に認識することができません。 このアダプタに限らず 他のMCA BUS上で使用されるPCMCIA は使用するCHIPによらず全て同様で IBM はMCA機用のWin95ドライバを発表することはありませんでした。
ただし、Win3.1用の  "PC Card Director"で試したところ少なくとも  28.8Kb ダブルジャックモデムを使用することは可能でした。 この場合 Win95 のシステムプロパティのDEVICE MANAGERでは PCMCIAは表示されませんが、MS-DOS COMPATIBILITY モードに陥ることなくシステムは正常に動作します。 BUS MASTERINGを使用するカードは多分無理ではないかと思いますがよくわかりません。

電源ユニット
    最大消費電力  ;  70W
    通常時              ;  40W. 

6860 のPSU  はかなりユニークな造りをしています。 クーリングファンは消費電力が50W以下で回転 が下がり、 30W 以下になると動作を完全に停止します。 つまりほとんどの場合 ファンはアイドリング状態にあるということになります。  
ジャンクで 6860 を入手したとき全ての動作は問題なかったものの、FANが停止していることに気がつ いた私は当時5551-Nや9595の電源でトラブルを経験した後だったこともあり、またしても電源トラブルだとガッカリ しました。 挙句に電源ユニットを分解し 出力部をチェックした上で、ファンのリード線を 12Vに直結させました。
その後、この電源の仕様を知ったわけですが、今度はリード線をオリジナルの結線に戻せるよう細工を施し、 直結 と 省電力静粛仕様 を選べるようにしました。 PC720内部は結構熱を持つので 夏場は直結、冬場は静粛仕様 の負け惜しみというか....

ちょっと怪しいこと (私の PC720 )
DOSで使用する分には何ら問題はないのですが、Win95B の場合起動の後 Win95 のロゴが表示された直後に フリーズしてしまいます。オリジナルの結線に戻しても症状は改善されません。 いろいろ試した結果始動直後は出力電流が安定するまでに時間を要するのではないかと勝手に推測し、Windows のスタ-トアップ時に起動 メニューを表示し Win95 をデフォルトとした上で起動時のディレイタイムを60秒にする事でとりあえずこの問題を解消 しました。 消費電流の少ないハードディスクを選べばよいのかもしれませんがそうそう買い替えるわけにもいかないので 「待つ」事でよしとしています。 今時 486系で遊ぶのはけっこう忍耐力を要する....。

その PC720 も NIFTY FORUMへのアクセスを止めた 2003.01.01以来 DOSフロッピーをこさえる以外パワーオンする機会もめっきり少なくなりました。

2023 3月現在、本機は何処へ行ったか所在不明。 何故か半死のPCI/ISA 6869-J4Kはいる。 




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