概略
5570はは日本IBMが従来のマルチステーションから 米国IBMのPS/2 シリーズにあわせて新シリーズとして投入した
マイクロチャネルアーキテクチャー による PS/55 シリーズの第一号機で 1987年5月に販売が開始されました。
紛らわしいことに 5570-S発売開始以降1990年11月頃までは従来のマルチステーションシリーズも
「IBMパーソナルシステム/55」として1990年11月までのシステムガイドに併記されていました。
マイクロチャネル PS/55 としての初代機は 5571-S0A というモデルで 386DX-16MHzに2階建ての日本語表示装置を搭載し( オプション扱いだったようです) OS は漢字DOS K3.3でした。
その後の展開は
1988年 4月 DESKTOP の5550-S/T と同時に 5570-T (20MHz機)
1989年 5月 5570-V0 (25MHz機)
1990年 5月 5570-V1 (25MHz機 SCSI仕様 )
と順次パワーアップされました。 ( 投入時期はシステムガイドによるもので
正確な発売月は多少前後するかと思います )
5570は基本的には PS/2 8580 と同一で日本語表示のためにシステムボードに搭載する
VGA をベースビデオとして PS/55日本語表示装置 (DISPLAY ADAPTER ) と漢字DOSを使用しました。
正確なところはわかりませんが、BIOSは修正が加えられているものと思われます。
5570-Sモデルは T モデル登場以降システムガイドから落ちており、その後のソフトウェアの互換性リストでも
5570-S はほとんどみあたりません。 これはシステムとしての初代DISPLAY ADAPTER とその後のJDOSをベースとしたDISPLAY
ADAPTER-II との間で日本語表示に関する何らかの変更があったためではないかと思うのですが、肝心の
Sモデル はもとより初代DISPLAY ADAPTER を見たことも触ったこともありませんので確かなことはわかりません。
TモデルとVモデルではシステムボードに違いがあり、後者は16bitスロットが一つ減り変わって32bitスロットが一つ増えています。
また V0モデルまではESDIアダプタと5インチESDI ハードディスクを搭載していましたが最終型のV1モデルでは
ESDI に替えて16bit SCSIアダプターとSCSI ハードディスクを搭載しています。
使用する メモリーカード( SIMM 形式ではない) も Tモデルと Vモデルでは
アクセススピードが異なります。
リファレンス
5570は非IML機でシステム構成には リファレンスディスケット が必要です。
Ver.1.0 初代の3枚構成DISPLAY ADAPTERを搭載する
5570-S用
Ver.1.15 DISPLAY ADAPTER-II を搭載する 557-S 用。
これらは5570-T以降では使用できないようです。
5570-T以降に関しては
Ver.1.36まではJDOSベース
Ver.1.40以降は DOS/Vベースです。
Ver.1.50 は他の386系のほとんど ( 5510、5535 を除く ) をカバーします。
メモリーの追加、 アダプタ類の追加・取り外しなど構成を変更する場合リファレンスディスケットがないと先に進めません。
基本的には PS/2 8580と同一なのですが BIOS P/N が異なるはずなので 8580用のリファレンスディスケットは使えないと思います。
メモリー
SIMM方式ではなく ボード上にメモリーCHIPが実装されたカードを電源ユニット直下の専用のソケット(2個ある)に挿し込みます。
初代の S および 2代目 T 両モデルはアクセススピード 80ns ~ 85ns のカードを使用し、最終型の
Vモデル(25MHz) は 70ns のものを使用します。 カードはソケット両端の 「留め金」で固定されています。
2MB システムボード・記憶拡張キット
5962899 5570-S/T 用
4MB システムボード・記憶拡張キット
94X5565 5570-S/T 用
4MB システムボード・記憶拡張キット
III 23F2986 5570-V 用
今現在手許に残っているのは
「4MB SYSTEM BOARD MEMORY III」
と記された P/N 33F5498 FRU 33F5538 のメモリー
ボードのみですが、
これはもしかすると
PS/2 8580-A21 のものではないかと思います。
VIDEO
初代 S モデルは 日本語表示装置アダプタ ( ID
# 47773089 ) を AVE専用スロットに装着しますが、このアダプタは5570-S
+ KDOS3.3 では日本語表示に必須であるにもかかわらずオプション扱いであったようです。
ちなみにこのカードは2スロット分を占有します。 価格は嘘のような\320,000
というお値段でした。
尚、私は「2階建て」と表現していますが正しくは 3枚の基盤( ベースボード、 FONT ROMボード、サブボード
)による構成で、各々のP/Nは 94X0970/94X0971/94X0972 であったようです。
)
Sモデルの後期、あるいは2代目のTモデルでは改良された日本語表示装置アダプタ-II
、改良型の III 、 そして更に5571-V1 では DA-V が搭載されました。
これらのアダプターは 512KBのVRAMと256色表示のための
追加512KB オプション VRAM が装着可能なで MCAスロットも1スロットだけ使用するようになっています。
ハードディスクインターフェース
S モデルから V0 モデルまでは ESDI アダプター(正式名称不明
)を搭載し 5" フルハイトのESDIハードデイスク を使用します。
V1 モデルは ID # 64F9050 の16bit SCSIアダプター
/A を標準で搭載し 80MBから320MBの3.5"ハードディスクが用意されました。 3.5"ハードディスクは専用の
5"変換用の金属製アタッチメントでハードディスクキャリアに収めるようになっています。
このアタッチメントは2台の3.5"ハードディスクを収容可能です。標準でついてくる内部
SCSIケーブルは硬くて取り回しが難しいので上質のケーブルで作り直すのがよいのではないかと思います...といっても
アダプター側はカードエッジ50ピンのコネクタが必要ですが.... ) 。
IML機ではありませんのでIBM純正 SCSIアダプターでなくても使用可能です。
尚、このモデルにSCSI CD-ROMを搭載するには
専用のベゼルが必要です。 (実寸合わせで標準でセットされているベゼルを加工する事も可能です。
)
画像などはいずれ時間ができた時にでも.....
5570-Sxx
( 16MHz
)
先にも書きましたようにこのモデルについては現物をみたことがありませんので詳しいことはわかりません。
システムガイドによれば以下のようになります。
5570-S0 スペック
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|
CPU |
I80386 16MHz ( 80387-16 数値演算プロセッサはオプション
) |
システムメモリー |
2MB ( 最大16MB, システムボード上では 4MB
) |
HDD |
70MB ( 最大140MB ) ESDI |
FDD |
2HD x 2基 |
MCAスロット |
32bit x3, 16bit x2。 この表記は 16bitスロットの内
1つは ESDIアダプタ、2つは 2スロット必要とする 日本語表示装置で使用されていたことを表していると思われます。) |
I/Oポート |
Mouse, キーボード、 プリンタ、 RS-232C
( 最大で 9ポートまでサポート ) |
システムセキュリティ |
パスワードチェック用 CMOSメモリ |
日本語表示装置 |
専用スロットに装着 ( 2スロット使用 ) |
漢字ROM |
日本語表示装置アダプター上に実装 ( JIS
Level 1 およびLevel 2 7190文字 ) |
VRAM |
2MB ! ( 4 画面 ) どういう意味かわかりません。 |
OS サポート |
KDOS 3.3, OS/2 J1.0 |
|
|
価格 (主だったもの)
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システム装置 |
\1,497,000 |
いつもの事ながら 驚き |
2MB システムボードメモリキット |
\240,000 |
|
70MB ハードディスク(ESDI) |
\500,000 |
|
日本語表示装置アダプタ |
\320,000 |
フツーのPC一台分 |
5574 C-02 16"カラーディスプレイ |
\370,000 |
|
5574 C-02 16"カラーディスプレイ |
\43,000 |
|
5576 G02 プリンター |
\530,000 |
|
5570-Txx ( 20MHz )
このモデルは実際に手許にあったことがあります。
が、当時記録することに無関心だったので記憶が定かだかでありません。
はっきりしていることは (たぶん16MHzモデルと一緒で
) 32bitスロットが Vモデルより一つ少ないということです。
5570-Vxx
( 25MHz
)
ESDI仕様の V0モデルは 1989年 5月に投入され、その翌年に
SCSI仕様の V1が投入されました。 PS/2でいうと 8580-Axx に相当します。 V1に採用された SCSIアダプタは
16bitカードのキャッシュ無しロングサイズカードです。
5570-T/Vの基本スペック
|
5570-T |
5570-V0 |
5570-V1 |
CPU |
i80386 20MHz |
i386DX-25 |
i386DX25 |
L2キャッシュ |
無し |
64KB |
64KB |
システムメモリー(標準) |
4MB |
4MB |
4MB |
HDD |
ESDI 70MB~314MB |
ESDI 115MB ~ 314MB |
SCSI 80MB ~ 320MB |
FDD |
2HD x 1基 |
2HD x 1基 |
2HD x 1基 |
MCAスロット(総数) |
32bit x3, 16bit x5 |
32bit x4, 16bit x4 |
32bit x4, 16bit x4 |
I/Oポート |
マウス、キーボード、 パラレルx1、 シリアル
x1
|
システムセキュリティ |
パスワードチェック用 CMOSメモリ
|
日本語表示装置 |
日本語表示装置アダプターII |
日本語表示装置アダプター V
|
漢字ROM |
日本語表示装置ダプター上に搭載
|
VRAM |
VRAM512KB ( 512KB VRAM拡張オプション有り)
|
OS サポート |
KDOS 3.3, OS/2 J1.0 |
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価格 (主だったもの) 1990年7月 システムガイドより抜粋
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システム装置 T0A 70MB |
\1,350,000 |
|
システム装置 T0B 115MB |
\1,750,000 |
|
システム装置 T0C 314MB |
\2,350,000 |
|
2MB システムボードメモリキット 5962875 |
\110,000 |
3年でほぼ 半値 |
4MB システムボードメモリキット 94X5565 |
\180,000 |
Tモデル用 *1 |
115MB ESDI ハードディスク |
\650,000 |
|
314MB ESDI ハードディスク |
\1,250,000 |
|
|
|
|
システム装置 V0B 115MB |
\1,850,000 |
|
システム装置 V0C 314MB |
\2,450,000 |
|
システム装置 V1A
80MB |
\1,550,000 |
|
システム装置 V1B 160MB |
\1,850,000 |
|
システム装置 V1C 320MB |
\2,305,000 |
|
4MB システムボードメモリキット III 23F2986 |
\180,000 |
V モデル用 *2 |
80MB SCSI ハードディスク |
\315,000 |
|
320MB SCSI ハードディスク |
\915,000 |
|
日本語表示装置アダプタ-II |
|
|
5574 M06 15"モクロームディスプレイ |
\128,000 |
|
5574 C06 14"カラーディスプレイ |
\221,000 |
|
5574 C07 16"カラーディスプレイ |
\370,000 |
|
5576-001 キーボード |
\43,000 |
|
5576-002 キーボード |
\38,000 |
|
5576-003 キーボード |
\30,000 |
|
*1 65X1214 も有り
*2 23F2974 も有り
VモデルのMCA BUS
上
下
|
スロット 8番 (最上段) SCSI/A に使用
スロット 6番 (上から3段目) 日本語ディスプレイ
アダプターを装着。
Slot-8 J13 マッチドメモリ付き 32bit コネクタ
Slot-7 J15 16bit コネクタ
Slot-6 J6 補助ビデオ付き 16bit コネクタ
Slot-5 J7 補助ビデオ付き 16bit コネクタ
Slot-4 J12 マッチドメモリ付き 32bit コネクタ
Slot-3 J14 16bit コネクタ
Slot-2 J11 マッチドメモリ付き 32bit コネクタ
Slot-1 J10 マッチドメモリ付き 32bit コネクタ |
Qconfig による Machine Type/Planar 表示
5571-T
Machine Type : IBM PS/55 Model 5571-T
- Compatible
Planar
: ID FFFC - PS/55 Model 5571-T
5571-V
Machine Type : IBM PS/55 Model 5570-V
- Compatible
Planar
: ID FFF9 - PS/2 Model 80 25 MHz
KINGSTON の486DX UPGRADE を使用した 5570-T の QCONFIGサンプル ( 4番会議室の報告より
)
Operating
System : IBM PC DOS Version 6.30
Date & Time
: 1999-04-10 23:41:38
Model ID
: F8
Sub Model ID : 06
BIOS Revision : 00
BIOS Date : 03/15/88
Machine Type
: IBM PS/55 Model 5571-T - Compatible
Processor
: Intel 80486
Estimated Speed : 39.2 Mhz
CoProcessor
: Integrated
Bus Type
: Micro Channel 32-Bit Bus
Keyboard Type : Enhanced
Equipment
: 1 Parallel Port(s)
: 1 Serial Port(s)
: 2 Diskette Drive(s)
: 1 Fixed Disk(s)
: Math CoProcessor
Serial Port 1
: COM1: 03F8
Parallel Port
1 : LPT1: 0378
SCSI Device(s) : Total 1 Unit(s)
: Disk 1 Unit(s)
Primary Video
: VGA
Diskette Drive
1 : 3.50" - 1.44M - 80 Track - Type 4
Diskette Drive
2 : 3.50" - 1.44M - 80 Track - Type 4
Fixed Disk 1
: 153 MB = 156672 KB = 160432128 bytes
Logical Drive
C : Size 153416K = 149.8M Avail
73180K = 71.4M
Total Memory
: 16000 KB = 15.6 MB
Conventional
: 640 KB Free: 538 KB
Extended Memory : 15360 KB Free: 0 KB
Expanded Memory : 15264 KB Free: 14608 KB Page Frame Address: D000
XMS Memory
: 14410 KB Free: 14410 KB
EMS Version
: 4.0
XMS Version
: 3.0
VCPI Version
: 1.0
Adapter ROM 1 : Addr C0000-C3FFF SCSI
Planar
: ID FFFC - PS/55 Model 5571-T
Total Slots
: 8 System (DISK): 2 User Slots: 6
Expansion Slot
1 : * No Adapter Present
Expansion Slot
2 : * No Adapter Present
Expansion Slot
3 : * No Adapter Present
Expansion Slot
4 : ID FCFF - IBM Memory Expansion Adapter 2-8M 80386
Expansion Slot
5 : * No Adapter Present
Expansion Slot
6 : ID EFFE - IBM Display Adapter II
Expansion Slot
7 : * No Adapter Present
Expansion Slot
8 : ID 8EFE - IBM SCSI Adapter
CPU アップ
グレード
以下のものを 5570-T と -V1 で実際に動作を確認しました。
-
Evergreen
REV to 486
( IBM486BLC3-75 ).
サブボード形式で非常に使い易いものです。システムボードに設置すると
CPUの上部にHDキャリアーの金属パーツがきますのでヒートシンクを適当な高さに削り込んでセットすると
HDキャリアが巨大ヒートシンク替わりになり、実際そのように
セットした人もいます。
削りこみが足りないとヤバイ事になると思いますけど...
2倍速、あるいは3倍速で駆動するには
EVERGREEN のキャッシュドライバを正しくインストールする必要があります。
注意点; このキットに限りませんが
386系のアップグレードの際は CPUのPIN位置を正しくセットしないと一発でキットの蒸し焼きが出来上がります。 最悪の場合 PSUまで昇天してしまいます。
-
Kingston
MCMaster
アダプター形式のアップグレードで
上記 「REV to 486」よりやや難しい面がありますが、 このアダプタの最大の利点は486CPUを使用できる事と同時に
SIMMを使用してメモリを 64MB 増設することが可能な事です。 私は実際に16MB
SIMM 2枚を搭載し システムボード上の8MBと併用で
トータル40MBで使用しました。 注意点としては 2MB SIMM は使用できないないということがあげられます。
隣接する32bitスロットを使用することができなくなりますが、その気になれば
5x86系のCPUをインターポーザーと併用する事により更なるパワーアップを図ることができます。
AMD5x86のQFPタイプを採用したキットであれば貴重な 32bitMCA スロットを犠牲にする事もないかもしれません。
私は 電圧変換インターポーザーに通常のPGAタイプのam5x86-133 並び
Cyrix5x86での動作を確認しました。
KINGSTONでは他にIBM486DLC2-66(ブルーライトニング
486/66 )を採用した
Kingston's
Lightning 486 upgrade もありますが、これは現物を見たことがありません。
このアップグレードキットは システムボードと独立したCPU用のクロック回路を搭載しており、外部33MHzでCPUを駆動します。 5570-V そのものではありませんが他の PS/55
386システム ( 20MHzの 5530-T )でキット上の33MHzOSCを
100MHz に変更し外部50MHz、 CPU
の倍速回路で内部 100MHzで駆動 したというレポートもありました。
更に前出のQCONFIGで紹介した
5570-Tで使用されている 486DX upgrade は「486DX
NOW」 という製品ですが、私はソケットまわりのピンが欠落した(あるいは
アタッチメントが無いだけかも )ジャンク品しか所有しておらず残念ながら動作を自分自身で確認しておりません。
このボードも CPUクロックはボードで生成する造りになっています。
-
Reply
PowerBoard
US REPLY社の 「 Mod. 80 PowerBoard 」という商品で システムボードをそっくりそのまま交換してしまうというアップグレードキットで
5570 (あるいは 8580)が IBM ではなくなります。
VIDEOはオンボードでアクセラレーター機能付きの CIRRUS
LOGIC GD5434を搭載し、HDインターフェースは EIDE を搭載、 CPU はCyrix 5x86 に照準を当てていると思われ、他にDX4-100、PODPなどが インターポーザー無しで使用可能です。どのような理屈かわわかりませんが 5V系、3.3V系を自動判別し適正な電圧を供給します。
尚、AMD の5x86-133 を4倍速で使用するには4倍速対応のインターポーザーを必要とします。 386系のアップグレードとしてはビデオも同時に改善できるという点で究極のアップグレードということになるのではないかと思います。 唯一の難点は搭載メモリが 64MB
に制限されるという点です。
L2キャッシュソケットを備えますが、 PC720 の DX4モデルに標準で搭載されている 128KBの「スーパーキャッシュ」が流用可能です。
他に REPLY社の製品として TURBOBOARD があり、本家IBMからも
モデル80 アップグレード
ボードとして販売されました。 これらは SIMMソケットを8個搭載しており、メモリ最大搭載量も128MB
となるようです。
以上の アップグレードキットの詳細については
Ardent
Tool. を参照下さい。 Reply社製品のドライバ、リファレンスなどは
こちら
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